はじめに

 この社会の中で生きていることから起こる悩み、苦痛、悲しみ、孤独、不安、むなしさ、うつ状態も、正常な心が苦しんでいる状態ですから、解決できるはずです。身体の面でも、がん、脳卒中、心筋梗塞は生活習慣病ですから、生活習慣を改善さえすれば、その多くは防げるはずです。

 「なんとしても、心身両面の新しい健康医学をつくらなければならない」という思いが常にありました。しかし、日本はもちろん、世界中の医学部の中に、内科、外科、小児科、産婦人科などはありますが、健康医学科はありません。

 約二五年前、そんな思いを持ちながら、ハイデルベルグにあったヨーロッパ分子生物学研究所に留学していたときのことです。兵庫県から、淡路島の五色町と協力して絶食療法を専門にする健康施設をつくるので来てほしい、と要望されました。

 華やかな先端医療の世界と変な医者と言われかねない道、選択には大いに迷いました。しかし、健康医学を志せば、大学を出る以外に道はありません。

 それ以来、私は医学管理されたファースティング(絶食療法)の方法を完成させるとともに、二〇年あまりの間に約二万人を指導してきました。そして、その実績の中から、自信を持っておすすめできる、誰もが日常生活の中で心身両面の健康を得られる「二一世紀の健康医学」を確立することができました。

 三年前、NHK教育テレビ「こころの時代」で、その心身両面の健康医学の話をしてほしいと依頼されました。「自分の山に登る〜二一世紀の健康医学をめざして」という題で、一時間お話をさせていただきました。放送後、全国の大変多くの方々から、共鳴した、感銘したというお便りをいただきました。二〇年にわたってつくり上げてきた私の健康医学が、多くの方に喜んでいただけるのは、もちろん、私にとっても最大の喜びですが、現在の社会が、やっと心身両面の新しい健康医学を求める、そのような時代になったという感慨もありました。

 ただ、この番組では、具体的な方法についてはあまり触れることができませんでした。そこで今回、この本で「本当の自分を発見し、自分の山を登る」ための方法である「4点セット」という絶妙な方法の紹介と解説をさせていただきました。4点セットとは、「性格分析」、「丹田呼吸法」、「ミニ・ファースティング(半日絶食)」と「生かされてる医学的事実の理解」です。性格分析については特に詳しく解説させていただきました。

 私の処方箋である「本当の自分を発見し、自分の山を登る」というのは、現代人にとって非常に魅力的なことだと思います。ぜひとも、本当の自分を生きて、自分の山を登っていただきたいと思うのですが、「それは、めいっぱい自分を主張して生きることですか?」と質問する人もあります。しかしそれでは、我を振り回すことでしかありません。我を振り回せば、確実に自滅してしまいます。

 「自分の山を登る」というのは、「自分を生きて社会適応もできる能力」「本当の自分を生きて、周りの人も幸せになれる能力」を持つことです。また、「本当の自分」や「自分の山」は頭で考えてわかるものではありません。実感が必要です。頭で理解する方法と実感する方法を組み合わせた方法が必要になります。それが、「4点セット」です。

 「本当の自分」や「自分の山」は、「4点セット」をトレーニングとして日々実践していただく中で初めてわかるものです。

 実際の登山と同じです。山の麓でどんなに飛び上がっても何も見えません。しかし、一歩一歩登って、三合目、五合目になると眼下には美しい風景が見えます。優しい花が咲きみだれるお花畑もあります。さらに、頂上に立てばすべてが見渡せます。登山に必要なことは、トーニングをして登山の能力を育てることです。

 「4点セット」を日々トレーニングとして実践していただければ、少しずつ心が安らいで癒され、希望や勇気を感じるようになります。さらに、トレーニングを続けていけば、やがて「本当の自分」を実感でき、「本当の自分を生きて、周りの人も幸せになれる能力」が身につきます。

 この新しい能力は、幼稚園の子供からお年をめした方々まで、現代という時代が最も必要としている能力だと思います。こころの時代を生きるための能力です。そして、この能力が身につけば、心の健康も、身体の健康も、当然の結果として得られます。ぜひ「4点セット」を繰り返しトレーニングとして実践してください。

 皆さんがこの本によって、本当に幸せな人生を送られることを心から願ってやみません。