がん・脳卒中・心筋梗塞で犬死にしないためのテスト




 「自分の中に、あふれるばかりの生命力と回復力がありながら、なぜ人生の半ばで、がん・脳卒中・心筋梗塞に倒れなければならないのか?」、 まさに犬死にと言わざるを得ない人も少なくないのですが、その原因の一つは知識にあるのではないでしょうか。「そんなはずはない、昔ならともかく現在は新聞、雑誌、テレビに病気の情報はあふれているではないか、みんな知識はもっている」、そのような返答があることでしょう。

 それならば結構なのですが、もしそうでなかったとしたら。少し不安になります。そこで、一度皆さんの知識を点検してみましょう。

 現在の日本人の年間の死亡数は100万人ほどです。そのうち、がんでなくなる人は30万人ほどです。つまり、3人に一人はがんで死亡します。これは大変な確率です。最もポピュラーな死に方はがんということです。人ごとのように思っていますが、実はこれが最もありふれた死に方、自分にとって最もあり得ることだということは深刻です。

 同じ様に6人に一人は心臓病でなくなります。中年以上であれば、問題となるのは心筋梗塞です。さらに8人に一人は脳卒中です。

 脳卒中は脳出血と脳硬塞とクモ膜下出血があります。脳出血は血管が破れるもので、原因は高血圧です。脳硬塞と心筋梗塞は血管が動脈硬化をおこし詰まるもので、原因は高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、運動不足、ストレスなどたくさんの原因があり、脳出血より予防が難しいです。

 三大生活習慣病のうち二つまでが血管の病気で、破れるか詰まるかだということです。これだけの予備知識を持って、以下の10問をしてみましょう。さて、どの程度正解していただけるでしょうか?                 
◆問題1.高血圧で犬死にしないために、最も大事なことは何か?

イ)減塩をする
ロ)体重を減らす
ハ)アルコールを慎む
ニ)自覚症状に頼らない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  高血圧で最も怖いのは、脳の血管が破れて脳出血を起こすことです。それを起こさないためには、何が一番大事かということです。

 それは減塩をすることか、体重を減らすことか、アルコールを慎むことか、自覚症状に頼らないことか、この4つの内どれでしょうかということです。皆さんはなんと答えられましたか。正解は(ニ)の自覚症状に頼らないということです。

 まずイ)の減塩をすること。これだという方が一番多いかもしれません。高血圧と減塩の関係は有名ですので、当然といってもいいでしょう。しかし、減塩が一番大事なことかというと、問題があります。つまり、減塩さえしていれば、脳出血を起こさないかというとそうでもないのです。

 減塩で下がる高血圧は確かに多いですが、減塩だけではさがらない高血圧もあります。腎臓の血管が狭くなっていたり、腎臓自体が悪くなっていたり、副腎にホルモンを分泌する腫瘍ができていたり、甲状腺機能亢進症などの特殊な理由で高血圧になっている二次性高血圧といわれるものでは、減塩では血圧は下がりません。

 また、普通の高血圧でも、食塩が関係しているタイプとストレスが非常に関係しているタイプとがあります。ストレスが関係しているタイプですと、減塩だけでは簡単には下がりません。

 普段は下がっていても、仕事がうまくいかないとか、家族に病人がでて何日もほとんど寝ずに看病したとか、ストレスが強くかかる場合は、当然上昇してきます。また、夏は下がっていても、寒くなってくると上昇してきます。

 ところが、「自分は減塩をやっている、これだけ苦労をして頑張っているから大丈夫だ」と思いこみます。当然でしょう。しかし、血圧が下がっているという保証はありません。安心していると脳出血を起こします。

 ロ)の体重についても同じことです。肥満の方では、減量すれば血圧が下がってくることが多いですが、全員が下がるとは限りません。まして、何キログラム減量すれば、必ず下がるという保証もありません。

 ハ)のアルコールについても同じです。大量のアルコールを飲んでいる方では、禁酒すれば下がるでしょうが、断定はできません。

 高血圧にとって、最も大事なことは血圧です。だから、血圧を測定しなければなりません。減塩も減量もアルコールを控えることも大切ですが、血圧が下がっていることを確かめるには、血圧を測定しなければ分かりません。

 「いや、血圧が高ければ自覚症状があるはずだ」、そのように思っている方が多いでしょう。これが、問題なのです。普段から200mmHgの血圧のある方でも、それに慣れてしまえば自覚症状は現れません。

 高血圧の初期は確かに自覚症状があることもあります。40才の後半ごろになって血圧が上がり始めると、目まいがしたり、頭が重いなど色々自覚症状が出ることもありますが、全くでない人はいくらでもいます。ということで自覚症状は全くあてになりません。自覚症状に頼らない、これが高血圧の対策では一番大事なことです。

 そうすると毎日、血圧を測定しなければなりません。血圧の自己測定ができなければ充分でありません。

 「自分で測るのは面倒だし、いつも主治医の先生のところへいって測ってもらっているので十分でしょう」、こういう人も多いでしょう。しかし、よく考えてください。主治医のところへいくのはどんなときですか。それは、気分的にも時間的にも余裕がある時ではないですか。「今日は時間が空いたから、ちょっと先生の所にちょっと行ってこよう」というように余裕があるです。そのようなときは血圧は下がっています。

 仕事が殺到して、もう3日も4日も寝ずに働いている、あるいは知人が亡くなって、今からすぐにお通夜に出掛けなければならない。そういう忙しいときに、主治医の先生の所に行きますか。しかし、そのようなときが、血圧が一番高いのです。そのようなときにこそ、脳出血が起こるのです。

 その時に血圧が測れなければ意味がありません。そのためには、血圧の自己測定が必要です。最近は、たくさんのメーカーが血圧計を販売しています。指先や手首で測定するタイプは問題がありそうですが、上腕に巻いて測る普通のタイプは、どのメーカーのものも、かなり正確に測定できます。このような血圧計はどの家庭でもあるはずですが、使いこなしている方は少ないでしょう。なぜ、使いこなせないかについては、問題2で考えます。


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◆問題2.高血圧で誤っているものはどれか?

イ)三度血圧を測定すれば三回とも違った値がでる
ロ)夏は血圧が下がり正常になることもある
ハ)正常血圧の人でも数年で高血圧になることもある
ニ)減塩、減量、ストレスの解消で殆どの高血圧は正常化しうる
ホ)薬で血圧を一度下げると、薬を止めても血圧は再上昇しない
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 問題2は、誤っているものです。

 三度血圧を測定すれば三回とも違う値がでる。これは正しいです。血圧が170mmHgだというと、いつも同じ値だと思っている人もいますが、血圧は刻一刻動いています。正常血圧の方でも、一日のうちで瞬間的には160や170mmHgになっていることがあります。まして、高血圧で静かにしているときに170mmHgもある方ですと、瞬間的には240mmHgにもなることは不思議ではありません。

 三度血圧を測定すれば三回とも違う値がでる。これはむしろ生きている証拠です。少しの精神的なストレスでも、体位の変動でも血圧は変化しています。この微妙な変化のお陰で、身体が滑らかに動けるのです。

 このことを知らなければ、自分で血圧が測れません。きっと血圧計が不正確なのだと思って、新しい血圧計を買う。しかし、これも測る度に違った値がでるので、また新しい血圧計をかってくる。いくつもの血圧計を並べてため息をついている。そのようなことはありませんか。これでは嫌になって血圧を測れなくなります。

 血圧の測定法は、朝食を済ませて、少し落ち着いたときがいいでしょう。いすに座って、同じ腕で測ってください。3回はかりましょう。最初が一番高いのが普通です。3回の平均値を出すのもいいですが、できればグラフを作って、3回全部の値を入れる方がいいです。

 さらに、最初のころは、会議のとき、階段を上った後、昼も夜も測ってください。どのようなときに、どの程度上昇するかを調べておかなくてはなりません。特に、寒い地方へ出張や旅行に行く場合は、血圧が急上昇するはずですので、血圧計を持参してください。このように、いろいろな場面で測ってみると自分の血圧の変化が理解できます。そうすると、朝一回はかるだけで、今日一日、どの程度高くなるかが分かるようになります。

 また、降圧剤を服用している場合は、夜中に血圧が下がり過ぎると脳梗塞を起こす危険があります。この場合は、朝起きてまだ布団の中にいる間に測定してください。夜中の血圧に近いものを知ることができます。

 次の、ロ)夏は血圧が下がり正常になることもある。これも正しいです。夏は、暑くなるので血管が開いています。また、汗をかき食塩を失うので減塩にもなります。夏は血圧が下がるのは普通のことです。

 ここで注意をしておかなくてはならないのは、夏の検診です。血圧が下がっているのは当然ですが、自分の血圧は正常だ、あるいは血圧は正常になったと思い込む人がいます。

 しかし、秋口になると血圧がスーと上がってきます。自覚症状がないから知らない間に三途の川を渡っているということがおこります。

 他の検査とちがって血圧については、夏だけ検診するというのはかえって危険です。夏検診に行ったから秋口、冬にも必ず行って下さい。

 それから(ハ)です。これも正しいです。正常の血圧の方でも数年で高血圧になります。高血圧になるのに、10年も、15年もかかりません。特に、主婦の方で検診の機会がない場合は、知らない間に高血圧になっていることもあります。はっと気付いたら閻魔さんと仲良くなっていたということがおこり得るということです。

 (ニ)の減塩、減量、ストレスの解消で殆どの高血圧は正常化する。これも正しいです。第1章のファースティングの効果で見ていください。ファースティングの効果は、この減塩、減量、ストレスの解消の3要素が強烈におこたことによります。日常生活では、これほど強烈にはできないでしょうが、「生かされてる医学」の3点セットをすれば、同じような効果が得られます。

 (ホ)の薬で血圧を下げると薬を止めても血圧は再上昇しない。これが間違っています。

 高血圧ばかりではなく糖尿病、高脂血症など成人病全般に言えることですが、(遺伝体質+環境因子)で発症するかどうかで決まります。

 高血圧の場合、環境因子は食塩、体重、ストレスです。薬で体質まで変えられませんので、薬を止めると血圧は上昇してきます。

 高血圧対策は、1)自覚症状に頼らない。2)血圧の自己測定ができるようになること。3)必要なときは降圧剤を飲むことです。生活習慣の改善は、すぐには効果を現しません。また、生活習慣がうまく改善できてきても、人生ですから時には急にストレスが強くなることもあります。そのときには、降圧剤で血圧を下げないと脳出血を起こしてしまいます。必要なときは、主治医の先生から降圧剤をもらって飲むことは大切です。

 薬ばかり飲んでいては不安になりますが、同時に生活習慣の改善を積極的にしていますので、やがては薬を半分にしたり、止めることができます。薬を自分の判断で止める方がおられますが、それは危険です。問題1でも言いましたように、血圧が再上昇しても自覚症状がないことが普通だからです。

 これが三つのポイントです。特に一番の自覚症状などは、殆どの人がお間違いになります。是非、周りに知らない人がいれば教えてあげて下さい。それを知るだけでも救われる人がいるはずだと思います。



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◆問題3.胸痛など、今まで全く無かった元気一杯の課長さんが、ある日仕事中に、突然、心筋梗塞で死亡した。このようなことは

イ)決して起こらない
ロ)まれにしか起こらない
ハ)時には起こりうる
ニ)結構起こっている

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 元気一杯の方が突然心筋硬塞で死亡する。これは深刻なことですが、決して起こらない、稀にしか起こらない、時には起こりうる、結構起こっているのどれでしょうかということです。

 正解は(ニ)です。結構おこっています。

 研究者の報告によって違いますが、心筋梗塞の発生の30%という人もあれば50%という方もあります。大変な率です。

 普通私たちは、心筋梗塞というのは、時々胸が痛くなる発作があって、ついにある日倒れるというように思っておるのですが、実情は決してそうではないのです。

 今までに自覚症状がなく突然、ということは、非常に多くおこっているのです。なぜそういうことがおこるのかということを次の問題で考えてみましょう。


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◆問題4.動脈硬化について誤っているのはどれか?

イ)動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞をおこす
ロ)肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、運動不足、ストレスがあると動脈硬化が起こりやすい
ハ)動脈硬化があると血管は徐々に狭窄して詰まる
ニ)和食は動脈硬化を起こしにくい
ホ)該当なし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  (イ)の動脈硬化が進行すると心筋硬塞や脳硬塞をおこす。これはそのとおりです。肥満、高血圧、糖尿病、高脂血尿酸、運動不足、ストレスがあると動脈硬化がおこりやすい。これも正しいです。動脈硬化を起こすものはたくさんあるので、心筋梗塞や脳梗塞の予防は難しいといえるでしょう。

 さて、問題の(ロ)です。動脈硬化があると血管が徐々に狭さくして詰まる。これがまちがっています。

 徐々に狭さくしては詰まりません。血管の一番内側に内膜というのがあります。それから筋層があります。この内膜と筋層の間にコレステロールが溜っていくものが動脈硬化です。

 しかし、30%や40%程度血管が詰まっても何の症状も出ません。75%程度詰まって、初めて「これは問題だ」となります。そして、ストレスがかかったり、血液が固まりやすくなったりしたときに、一挙に血栓ができて詰まってしまうのです。ある点まで無症状できて、ある点までいったら一挙に詰まってしまう、これが実状です。

 心臓を養っている血管は3本あります。この血管の動脈硬化を調べる検査にマスターの運動負荷試験といわれるものがあります。二段になった階段を、年齢や体重によって異なりますが20から30回ほど往復します。運動するとたくさんの血液が心臓の筋肉に必要となります。安静時では、多少血管が詰まっていても、必要な血液を送ることができますが、運動すると足らなくなります。それが心電図に所見として現れます。

 1本の動脈が75%詰まっていたとき、この運動負荷試験をすると65%の人で異常がでたという報告があります。逆にいえば、35%はその状態でも異常とはでないのです。2本が75%以上詰まっていた場合は、80%、3本の場合はさすがに95%と報告しています。

 普通の人間ドックでは、安静時の心電図だけですが、安静時で異常が見つかるのは、とても早期発見とはいえません。狭心症の人でも発作がないときは、心電図に異常が現れないことがむしろ普通です。多少のことでは発見すら難しいのです。

 自覚症状はない。心電図にもなかなか異常が現れない。これではどうして予防したら良いのでしょうか。

 以前、ある時計メーカの社長さんが、「ゴルフでパターをしていて倒れた」と話題になりました。ゴルフのパターでなぜ心筋硬塞で死ななくてはならないのか、何であんなことで倒れるか、と疑問に思われるでしょう。パターというのは随分ストレスがかかります。そうすると血管がけいれんを起こす。そのときに動脈硬化がかなり進んでいると一挙に血栓ができて詰ります。

 徐々には詰まりません。徐々に詰まるんであれば、誰だって狭心症状が出て、誰だって病院へ行かなくてはと思えるわけです。そうではないというところに落とし穴があります。

 心筋硬塞に関して、よく「あの元気な人が急に倒れた」とか、「今まで何もなかったのに突然バタッといった」と人から聞いたりしますが、それが普通の死に方だということをご理解下さい。

 次に(ニ)の和食は動脈硬化を起こしにくい。これは確かにそうです。和食は素晴らしい動脈硬化の予防食であるといってもいいでしょう。ただ、日本食はどうしても食塩が多いという欠点があります。高血圧を予防も考えてうす味にしてください。


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◆問題5.痛風について正しいのはどれか?

イ)痛風の発作が出たときだけ治療する
ロ)痛みがなくても、血液中の尿酸が6.5〜7mg/dlを越えないようにする
ハ)血液中の尿酸が6.5〜7mg/dlを越えると膵臓や肝臓に障害がくる
ニ)尿酸が高い人は心筋梗塞になりにくい
ホ)該当なし

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  (イ)は間違いです。痛風の発作は有名です。典型的な場合は、足の親指の付け根が腫れて非常に痛いものです。しかし、足の痛みで死んだというのは聞いたことがありません。本当の問題は、腎不全や心筋梗塞の原因になることです。痛み以外に何が問題なのかを知らなくてはなりません。

 (ロ)の痛みがなくても血液中の尿酸が6.5〜7mg/dlを越えないようにすること、これが正しい答えです。

 血中の尿酸が6.5〜7mg/dlを越えると、尿酸がそれ以上血液中に溶けません。結石となって腎臓を破壊し、最終的には腎不全になって人口透析が必要になります。日本での高尿酸血症の死亡原因の一位は腎不全です。あるいは、動脈硬化を進め心筋梗塞を起こします。

 痛みが出るのはやはり10や12mg/dlなどと尿酸が随分高いときです。そのときまで待っていたらとんでもないことになります。

 また、尿酸の値が非常に高くても、痛みがいつもあるわけではありません。痛みがなくなったから、もう大丈夫だと放置しておりますと、毎日毎日腎臓は壊れていきます。

 腎臓も透析する直前まで無症状なことがいくらでもあります。腎臓も非常に強い臓器で、機能が1/4以下にならないと、血液検査のBUNだとかクレアチニンは上昇しません。(ハ)も間違いです。腎臓が傷害されるので、膵臓や肝臓ではありません。(ニ)も間違いです。心筋梗塞になりにくいのではなく、なりやすいから問題なのです。

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◆問題6.糖尿病について間違っているのはどれか?

イ)血糖が高いと心筋梗塞や脳梗塞になりやすい
ロ)血糖が高いと腎臓障害や失明しやすい
ハ)肥満者の糖尿病は減量で著明に改善する
ニ)糖尿病では多尿や全身倦怠感がでれば、治療を始めなければならない
ホ)該当なし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  (イ)は、まさにそのとおりです。糖尿病の死亡原因が動脈硬化、つまり心筋梗塞、脳硬塞であるということはよくご存じでしょう。

 (ロ)も正しいです。糖尿病で、目の網膜の動脈硬化がすすむと失明しやすくなります。命には関係ないとはいっても、悲惨な状態になります。糖尿病の死亡原因の重大なものの一つが腎不全であることもご存じでしょう。

 (ハ)も正しいです。第1章で見ていただいたように、肥満した人の糖尿病では、数キロの減量で血糖が正常化する場合は少なくありません。この数キロの減量をするかしないかが実に大きな意味をもっています。

 間違っているのは(ニ)です。「多尿や全身倦怠感などの自覚症状が出てくれば治療をしよう。しかし、今は自覚症状がないので大丈夫だ」、こういう考えでは困るのです。

 尿の中にいつも糖が漏れている状態でないと、多尿になったり、倦怠感などの症状はでてきません。尿にどんどん糖が漏れる状態は、血糖が180か170mg/dlを越えています。空腹時血糖が170、180mg/dlを越えているのはかなり進行してた状態です。症状が出るまで待っておれば、動脈硬化はどんどん進行してしまいます。


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◆問題7.肺癌について間違っているのはどれか?

イ)肺癌は大幅に増加している
ロ)タバコを、一日に50本吸う男性は、15倍肺癌で死亡する
ハ)胸のレントゲン写真を取れば早期発見できる
ニ)家でタバコを吸うと、家族も2倍肺癌で死亡する
ホ)該当なし

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  最近の40年間で見ると、男女とも肺癌は大きく増加しております。煙草を1日50本吸う男性は、15倍肺癌で死亡する危険が増える。これも事実です。日本人のデーターですので、私たちにそのまま当てはまります。

 胸のレントゲン写真を見れば早期発見できる、これが間違っております。胃の透視はバリウムを飲みます。胃カメラはカメラで直接胃のなかを見ていますので、精度が高いはずです。

 一方胸のレントゲンは何十年も昔から相変わらずただ写すだけです。造影剤も何も入れていません。これでは感度が良いはずはありません。大きくないと写りません。だから見つかったときは転移している確率も高くなります。

 対策としては煙草をお止めください。家で煙草を吸うと家族も二倍は肺癌で死亡する。これも事実です。


 
 
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◆問題8.ジョギングを30分して、体重が1.5kg減少した。この間消費したカロリーはおなかの脂肪にすると?

イ)約1kgである
ロ)約500gである
ハ)約100gである
ニ)約40gである

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  正解は(ニ)の40グラムです。

 おなかの脂肪は水分が30%と仮定すると、正味の脂肪は70%ですので、28gが脂肪ということになります。脂肪は1gが9kcalですから、252kcalになります。消費カロリーは年齢と体重で相当異なりますが、おおよそジョギング30分の消費カロリーに相当します。

 いかにも少ないと思われるでしょうが、実際にそうなのです。運動してそんなに体重が急激に落ちれば困ります。42キロメートルのフルマラソンを走って帰ってきたら、骨と皮だけになったというのでは困ります。人間は食べないことについては非常に強いですし、運動も非常に効率よくできるようにできております。おなかの周りの脂肪10キロは30日分のエネルギーに相当します。


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◆問題9.野球の投手が、1回から9回迄完投したときに消費するカロリーは?

イ)ビーフステーキ5人前
ロ)うなぎどんぶり5人前
ハ)スパゲッティ・ミートソース一人前
ニ)ビール大1本

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  正解はハ)です。

 野球の投手が、1回から9回まで完投するのですから大変なことです。ビーフステーキ5人前ぐらいは食べても良いように思います。同じように消費カロリーは年齢と体重で異なりますが、消費するカロリーは700キロカロリーぐらいです。スパゲティーミートソース一人前です。5回でノックアウトされたら、スパゲッティーは半分しか食べられません。


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◆問題10.心と身体の関係について誤っているものはどれか?

イ)ストレスは、自律神経系と内分泌ホルモン系を撹乱させる
ロ)ストレスは心筋梗塞、不整脈、ぜん息、胃潰瘍の引き金となる
ハ)A型行動パターンと呼ばれ、心筋梗塞を起こしやすいと言われている人は、自分ではストレスを感じていないことが多い
ニ)ストレスがあっても、それに打ち勝ってゆける人は、生活習慣病にかかりにくい
ホ)該当なし

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  最後の問題です。

 心身相関という言葉が出てきております。この心身相関というのは新しい言葉で、あまり耳慣れない言葉だろうと思いますが大変大事な言葉なのです。この本の中心なので、第2章に詳しく説明しています。

 昔から心と体は一つだとか心身一如だとかよく言われいます。特に、東洋にはそういう考え方がありました。それを医学的に言うと心身相関と言います。ごく簡単に説明しますと、心と自律神経系や内分泌ホルモン系さらに免疫系も一体になって動いています。心と体は一つですということです。

 (イ)は正しいです。ストレスは視床下部を刺激して自律神経系、内分泌ホルモン系を撹乱させます。

 (ロ)も正しいです。ストレスは心筋梗塞、不整脈、ぜん息、胃潰瘍の引き金となります。

 (ハ)はどうでしょうか。普通ストレスというのは、嫌な思いや、不安や不満を感じるのがストレスだと思っていますが、ところがそればかりではないのです。A型行動パターンと呼ばれる方は、元気いっぱいで、心筋梗塞をおこしやすいといわれていますが、このタイプの方は、自分ではストレスを感じていないことが少なくありません。

 A型行動パターンの方は、心身共に大変優秀な方です。朝早くからどんどん働いて、テキパキと仕事をこなし、夜は夜で飲んだり食べたりしながら仕事の話を進め、深夜に及んでも付き合いマージャン、翌朝も早くから元気いっぱい仕事にでかける。日曜日は日曜日で付き合いゴルフ。年がら年中150%で走れる精神的にも体力的にも強い方です。

 自分ではストレスや疲れを感じない。あるいは感じられないと言うほうがよいかもしれません。このような精力的な方々をA型行動パターンと呼んでいるのです。この方々に、アメリカで心筋梗塞が多発するということで問題になりました。

 一方、ストレスや疲れを感じすぎる方をB型行動パターンといいます。このタイプの方は何かありますと、すぐに不安や不満になる。頭が痛くなる、肩が凝る、胃が痛い、もうとてもダメだ、私は重病人であると言ってすぐ横になってしまう。この方々はストレスを真っ向から受けます。しかし、この真っ向から受ける方々はすぐにダウンしますから、食べたり飲んだり無茶なことはできません。このためかえって細々と長く生き延びるということになります。(ハ)は正しいということです。

 (ニ)はどうでしょうか。A型行動パターンの方は、体力も精神力も強いがゆえに、ついつい激務になり突然死を起こすことになりす。そういうことでストレスがあってもそれに打ち勝っていける方は成人病にはかかりにくい、これが間違っています。

 健康医学の立場からみますと、これは大変難しいです。いつも医者のところへ来る人はB型行動パターンの方が多いです。「先生、先生」と頼っていただけます。「ここが痛い」とか「どこか悪いのとちがいますか」と、早目早目に医者のところに起られるから、あまり悪くはならない。

 「医者なんかいらない。自分の身体のことは自分が一番よく知っている」と飛び回っておられる方、この方々が危ないのです。「先生、そんなに心配していたら、病気になりますよ」、医者の方が妙な指導をされる羽目になります。この方々をつかまえて生活習慣の改善をしていただかなくてはならないのですから大変難しいのです。

 10問の解説が終わりました。さて、皆さんは何題正解していただけましたでしょうか。 



◆まとめ

「がん、心筋梗塞、脳卒中で犬死にしないためのテスト」のまとめをしてみましょう。

がん・脳卒中・心筋梗塞の特徴は

1.起きるまでは殆ど自覚症状がない
2.起きてしまえば、死に至るか著しい後遺症を残す
3.その多くが予防可能である

 これだけ大変な病気なのに、この3つの病気の特徴は、先ず第一に「起きるまでは、自覚症状は当てになりません」ということです。これが実に大切なことです。

 勿論、厳密には多少の自覚症状はあります。ただ身体が少し重いなとか、少し頭が痛い、ちょっと息苦しい、胃がむかむかすることは、日常いくらでもあります。

 しかし、今あるのが日常普通にある自覚症状なのか、死に至る自覚症状なのかその差が分かりません。「これは死に至る自覚症状ですよ」とはっきり分かる自覚症状はないのです。ですから、自覚症状はない、あっても当てにはならないとはっきりと割り切って頂く必要があります。

 治療医学は、非常に素晴らしいレベルに達しています。ただ治療医学はどうしても病気になってからする医学ですから、極端な言い方をすれば、「起こってしまってからの医学」になる危険性があります。

 堤防を想像してください。大雨が降って水が増えてくる。堤防にひびがあっても補強さえしておけば、別に水かさが増えても何ともありません。しかし、補強を怠って、一旦堤防が切れてしまうと洪水です。もう収拾がつかなくなります。どんな素晴らしい救助艇があっても、立派な対策本部を設けてもできることは限られます。予防医学、健康医学が必要なのです。


◆がん・脳卒中・心筋梗塞予防の三か条

 次に、生活習慣の改善のお話します。たくさんのことを言いますと何も出来なくなりますので、3つに絞っています。がん・突然死予防の3か条です。

1.禁煙

その第一は禁煙です。煙草を止めるだけでがんは3分の1も減ると言われています。何か一つ止めるだけでこれ程までに効果が出るようなものはありません。

 逆に、いかに煙草の害が大きいかということです。煙草20本吸っていると肺がんによる死亡率は4、5倍になる。50本を越えると、15、6倍になります。

 しかし、煙草は肺がんだけではなくて口から喉のがん、食道がん、胃がんそれから肝臓がん、すい臓がん、膀胱がんと身体中のがんを発生しやすくします。さらに、ご主人が吸えば、奥さんは吸わなくても危険率は2倍になります。

 煙草を吸ってる人はきっぱり禁煙です。

 なお、がんは最初一個の細胞から出発します。2倍、4倍と増えるので検診で発見できるほどの大きさになるには、10年、20年とかかります。60才で肺がんが発見されても、がんは遥か以前から起っているのです。 今、たばこを止めないで、がん予防はないのです。ちゅうちょなく禁煙することです。

 たばこをやめて5年ぐらいすると危険率は、非喫煙者と同じにまで低下するといわれています。まだ間に合うかもしれません。そして、すぐ次の健康食に切り替えましょう。




2.食事

 第2番目は食事です。食事とがんとの関係は、 男性ではがんの30〜40%、女性では実に60%ぐらいが食事に関係していると考えられています。その内容は6項目です。

 まず、極端なとり方をしないことです。栄養学は、まだまだ未知の部分が多い学問です。学説が変わる可能性もあります。単品だけを薬の感覚で多量にとっていると思わぬ結果を招きかねません。まして、錠剤になったものを服用するというのはよくありません。

あくまでも、日常の食事で、以下のような摂取ができるように料理や調理法を工夫してください。栄養素のバランスも壊れてはいけないので、時々きちっとした栄養計算して適正かどうか確認してください。

1.カロリーを減らす
2.脂肪を減らす
3.食塩も減らす
4.緑黄色野菜と果物を増やす
5.海草やきのこ、穀類も増やす
6.お酒は、日本酒ならお銚子1本まで

  第1は、太ってる人の場合はカロリーを減らし、減量するということです。超肥満者では、大腸がん、乳がん、前立腺がん、胆のうがん、卵巣がん、子宮がんが増加するといわれています。ただ、この健康食は以下を読んでいただければ分かるように結果的に低カロリー食になりますので、一石二鳥です。

《メモ》減量の8か条

 ここで、減量に成功するための8か条を簡単にご説明しましょう。

1.医学管理のもとですること。
2.関所が必ず来る。
体重は、減量を初めて最初はどんどん減りますが、少々頑張っても簡単には減らないという関所がきます。食事の量を減らせていくと、身体が低カロリーに適応するからです。これを知らないとすぐに嫌になってしまいます。
3.体重は簡単に減らない
おなかの脂肪10Kgは30日間のエネルギーに相当します。簡単には減りません。
4.食品のカロリーを覚えること
5.運動による消費カロリーは極めて少ない
6.体重を毎日測定する
7.体重の減り方には個人差が大きい
8.ストレスを解決する

 第2は、脂肪を減らしましょう。

 高脂肪食は、乳がん、大腸がん、前立腺がんの発症原因となります。その他、卵巣がん、子宮体がん、膀胱がん、肝臓がん、すい臓がんを増加させるといわれています。肥満者の食事は高脂肪食が多いことが、肥満者のがんの原因になっているのかもしれません。また、脂肪を減らすことは動脈硬化を防ぎます。心筋梗塞や脳梗塞の予防になります。さらに脂肪を減らせば、減量にもなります。

 第3は、食塩を減らして下さい。

 食塩摂取量が多いと胃がん、食道がんの発生率が多くなります。

 日本に胃がんが非常に多いのは、食塩摂取量が非常に多いことが大きな原因になっているようです。また、食塩を減らすことは高血圧を改善しますので、脳出血の予防になります。

 第4は、増やすものです。緑黄色野菜と果物をうんと増やして下さい。

 これは皆さんもよく聞かれておりますようにベーターカロチンです。体内でビタミンAに変わる物質です。これががん予防に効果があると言われています。

 このベーターカロチンというのは人参に非常にたくさん含まれています。ほうれん草のような野菜に比べて腐りにくい、値段も安いということで人参がやはり王様でしょう。その他は、ほうれん草、小松菜、ニラ、京菜、ブロッコリー、かぼちゃなどです。

 それからビタミンCです。これもがん予防に効果があると言われています。まず、キウイフルーツです。含有量も多く、年中何処でも手に入ります。あとはいちご、みかん、柿、その辺が四天王でしょう。

 野菜からはベーターカロチンを摂る。ビタミンCは果物から摂ると考えたらいいです。というのは野菜からもビタミンCを摂ろうとすると、調理がしにくくなります。ベーターカロチンは焼いても煮ても多少のことでは壊れませんが、ビタミンCは簡単に壊れますから、別々にした方が調理がしやすいです。

 特に煙草を止める人は、禁煙してから5年もすれば安心してもいいと言われていますが、今日止めてすぐ今日は間に合いません。だから死ぬ思いで煙草を止めて、やっぱり肺がんで死んだという悲劇が起こりますので、煙草を止めると同時に、緑黄色野菜と果物をうんと食べる。この両方をやるといいでしょう。

 第5は、その他の繊維のある食品を食べましょうということです。植物繊維の減少が大腸がんの増加の原因と考えられています。大腸がんはアメリカで大変多く、過去の日本では少なかったが、最近非常に増えてきていることを考えれば、和食は優れた食事だということです。大腸がんの予防ために大いに植物繊維を取りましょう。

 きのこ類と海草をうんと食べて下さい。それから穀類も食べて下さい。果物、野菜、それから海草、きのこ、穀類そういう繊維質があるものをたくさん食べると、便秘、糖尿病、高コレステロール血症にも効果的です。

 しかし、これらを大量に食べるとなると生では食べられませんし、胃の弱い人は胃腸を壊します。炊いたり煮たりして食べて下さい。ただ、日本食というのはベジタリアンに近く、非常に野菜が食べやすい料理です。

 お肉のあまり入ってないすき焼きだとか、野菜ばかりのカレーライス、焼きそばでも野菜ばかりの焼きそばとか、水炊きなどは最適です。適当に味付けをすれば食塩をそんなに使わなくてもおいしく食べられます。

 第6は、アルコールを減らすこと

 アルコールは、お酒なら1合までにしましょう。特にたばこと一緒であれば食道がん、口腔がん、喉頭がん、肝臓がんを起こします。お酒を飲むなら1本にして下さい。お銚子1本かビール1本です。

 ただ、アルコール性の肝炎とか脂肪肝とかはかまいませんが、B型やC型の肝炎がある方、あるいはキャリアの方は肝臓がんの心配がありますので禁酒です。

 以上が健康食です。但し、この食事は、日本人にはむしろお馴染みのものです。一言でいえば、食塩を減らした和食です。

3.ストレスの解決

 それから3番目はストレスの解決です。

 ストレスの問題は日増しに大きくなってきています。日本がストレス列島になっています。しかも、生活習慣病はストレス病です。禁煙もバランスのとれた食事も、頭で理解することは簡単です。しかし、実行できるかどうかは、ストレスを解決できるかどうかにかかっています。「ストレスの解決こそすべて」、そう言っても言い過ぎではありません。